2018/12/29

Anibal Sanchezと2年契約

ブレーブスからFAとなっていた先発右腕のAnibal Sanchezと2年契約に合意しました。年俸として、2019年に600万ドル、2020年に700万ドル。加えて、2021年1月に600万ドルが支払われ、トータルで「1900万ドルの2年契約」ということになります。また2021年シーズンについて、年俸1200万ドルの球団オプションが付いています。

ベネズエラ出身の34歳(来シーズン開幕時は35歳)。2006年にマーリンズでメジャーデビューし、2010年にはローテーションに定着。FA前最終年となった2012年夏にタイガースにトレードされ、オフに5年8000万ドルの大型契約でタイガースと再契約。翌2013年には2.57でリーグの最優秀防御率を記録しました。2012年、2013年にはポストシーズンでも先発しましたが、ここがピーク。翌2014年以降は毎年1点ずつ防御率を落とし、5年契約の最終年となった昨年はもっぱらブルペンに回り、防御率6.41という惨憺たる成績に終わりました。今季はツインズとマイナー契約を結び、スプリングトレーニングの序盤でカットされ、キャリアが終わったかと思われました。ところが、ブレーブスに拾われ、24試合に先発して防御率2.83と、まさかの復活を遂げました(NLDSでも先発)。

2018年の復活を本物と見るかまぐれと見るかは、なかなか難しいところですが、投球スタイルを変化球主体に大きく変えた結果であり、またそのスタイル変化に大きな役割を果たしたのが(やはりナショナルズに加入した)Kurt Suzukiだったと記者に言っていたようなので、少なくとも1年は好投してくれるだろうと期待しています。

Tanner Roarkのトレード放出で空いたローテーションのスポットを迅速に埋める動き。悪くないと思います。

2018/12/16

ロースター異動まとめ(2018年12月)

12/7 Patrick CorbinとFA契約
12/12 Tanner Roarkをトレード放出
12/15 Matt AdamsとFA再契約

● Patrick CorbinとFA契約
FAとなっていた29歳の先発左腕Patrick Cobinと6年1400万ドルの大型契約を結びました。詳細は別記事をご参照ください

● Tanner Roarkをトレード放出
2013年からナショナルズで活躍してきたTanner Roarkがレッズにトレードされました。ナショナルズはブルペン右腕のTanner Raineyを獲得。詳細は別記事をご参照ください

● Matt AdamsとFA再契約
FAのMatt Adamsと契約に合意しました。今シーズンも開幕から8月末までナショナルズで活躍し、カージナルスにトレードされていった選手なので、再契約です。詳細は別記事をご参照ください

Matt Adamsと再契約

FAのMatt Adamsと契約に合意しました。内容は1年400万ドル(2019年の年俸300万ドルと、2020年の相互オプションが拒否された場合の100万ドルで、保証されるのは計400万ドル)報じられています。今シーズンも1年400万ドルだったので同額です。

改めて書くまでもありませんが、再契約です。ファーストの控えかつ左のパワーバットという、求められる役割も2018年と同じ。いや、むしろ、当初の想定として、Ryan Zimmermanとのプラトーンとしての面が強くなり、多くの出場機会を得ることが期待されます。(今季はそこまでの期待はされていなかったのに、ZimmermanがDL入りしていたため結果的に出場機会が増えた。)

今シーズンの前半にナショナルズで活躍したので、当然どこかでもっといい契約を得るのかと思っていたのですが、(今チェックしたら)夏にカージナルスにトレードされていってからは、27試合で.158/.200/.333という惨憺たる成績だったんですね。

シーズン途中でトレード放出された選手が、オフに再契約するというケースは珍しいのですが、ナショナルズ首脳陣が持っていた好印象と、他球団からの評価には差があったのかもしれませんね。それでも、ナショナルズでの環境が気に入っていたということでしょうから、期待しています。

2018/12/13

Tanner Roarkをトレード放出

Bryce Harperの去就をめぐる動きに注目が集まっていたラスベガスでのウィンターミーティング中に、Tanner Roarkがレッズにトレードされることが決まりました。ナショナルズはブルペン右腕のTanner Raineyを獲得。Tanner とTannerの1対1のトレードです。

2010年の夏にCristian Guzmanとのトレードで加入した古株。調べてみたらRyan Zimmerman、Stephen Strasburgに続く3番目に古くから球団に在籍している選手でした。加入当時は全く無名のプロスペクトでしかなく、実際投げさせてみても凄い持ち球があるわけでもなく、その後の昇格もゆっくりでしたが、26歳となった2013年8月にメジャービューすると、運にも恵まれて2か月で7勝を記録。あっさりと2014年の開幕ローテーションに入って15勝を記録。翌2015年にはMax Scherzerの加入に伴い一時的にブルペンに回されたりして調子を崩してしまったものの、先発に戻った2016年シーズンには16勝、防御率2.83という素晴らしい成績を残し、サイ・ヤング賞投票でも得票するほどの活躍をしてくれました。このまま一流投手として花開くかと期待させましたが、ところが、ここでWBCが出てきます。2017年の春に参加したWBCでは、準決勝の日本戦で先発し4回無失点に抑えるなどアメリカの初優勝に貢献したのですが、チームに戻ってからどうも調子が出ず、2017年、2018年といずれも防御率4点台の残念な結果に終わりました。あまり大きな声では言いたくありませんがWBCに参加して調子(もっといえばキャリア)を崩す選手が一定数いることは確かで、残念ながら(今のところ)Roarkはそのうちの1人になってしまっています。ただ、マウンドに上がればきっちりしたピッチングを展開し、大きな故障なくローテーションを守ってくれる貴重な投手であることは確かで、打線の援護さえあれば今季だってもっと好成績でも良かったと思います。低い評価を覆し、ここまでのし上がってきたRoarkがいなくなるのは寂しい気もしますが、来季は32歳となり、FA前最終年。過去2年の不調も踏まえると、切り替えを図った球団の判断はあながち間違っていないとも思います。

Tanner Raineyは25歳のブルペン右腕。2015年のドラフト2巡目で入団し、順調にステップアップ。今年の4月にメジャーデビューを果たしています。ただし、5月と7月の昇格も合わせて計8試合に登板しましたが、いずれも敗戦処理で、うち6試合で失点し、防御率24.43という数字に終わりました。AAAでは44試合に登板し、防御率2.65、イニング数を上回る奪三振を記録しています。100マイルを超える速球と90マイルのスライダーが武器。2018年シーズン開幕前のBAランキングではレッズの組織内20位のプロスペクトで将来のクローザー候補と期待されていました。課題は(よくある話ですが)制球力。リスクはありますが、メジャーでの戦力となる可能性も十分にあります。2018年にメジャーロースターに入ったばかりであり、FAまでは5年以上あり、オプションも2つ残っています。

先日のPatrick Corbinの加入によりナショナルズのローテーションの前の3人は超強力となりましたが、このRoarkの放出により4,5番手はいきなり不透明となりました。間違いなく次の補強があるはずです。Raineyの年俸はまだ年俸調停前の最低保障年俸(50万ドル程度)なので、年俸調停最終年で約1000万ドルと見込まれていたRoarkの年俸が丸々浮き、これが補強資金となりそうです。というか、これがナショナルズの狙いと思われます。

実績から見ると不釣り合いなトレードのように見えますが、年俸、残り契約年数を加味するとちょうど釣り合っているのかもしれません。いずれにせよ、両選手の今後の活躍を応援しています。

Patrick Corbinと6年契約!!

DバックスからFAとなっていた先発左腕、Patrick Corbinと6年契約に合意したというビッグニュースが入ってきました。

この冬のFA市場では最も高い評価を得ていた投手、野手を含めてもBryce Harper、Manny Machadoに次ぐ評価を得ていた選手です。先週、フィリーズ、ヤンキースとともにナショナルズの球場・施設を視察するツアーを行っており、ナショナルズの球団首脳とも会食をしたというニュースは流れていましたが、まさか本当に契約するとは思いませんでしたので、喜びよりも驚きが先に来ました。

2009年のドラフト2順目でエンゼルスに大卒入団。約1年後にDバックスにトレードされ、順調にマイナーをステップアップし、2012年にはメジャーデビュー。2013年にはオールスターにも選出され、2014年は開幕投手に指名されていましたが、開幕直前にTJ手術を受けることになり全休。復帰後、2016年シーズンは防御率5点台と不本意な結果に終わりましたが、2017年は完全に復活、そして28歳で迎えた今シーズンは自身初の200イニング(ちょうど)を投げて、防御率3.15、246奪三振。2度目のオールスターに選ばれ、サイ・ヤング賞投票でも5位に入りました。実績はまだエース級とは言えませんが、まだ29歳ですから、今シーズンと同程度、あるいは上回るピッチングを今後数年にわたってしてくれると期待していいと思います。

持ち球はスライダー。速球は90マイル台前半ですが、左腕からのスライダーは一級品で極めて高い空振り率、そして奪三振を記録しています。ゴロ率も高く、被本塁打は少ないですね。Max Scherzer、Stephen Strasburgとともに三本柱を形成することになりますが、当然ながら極めて強力なローテーションとなります。

QOを蹴っているのでナショナルズは来年のドラフトで2順目と5順目の指名権を失うそうです。まあ、仕方ないでしょう。むしろ気になるのは、この契約により、Bryce Harperとの交渉、あるいはAnthony Rendonとの契約延長に向けた動きにどれくらい影響がでるかです。

なお、契約内容は6年1億4000万ドルと報じられていますが、詳細がはっきりしたら追記したいと思います。

(12月14日追記)
契約の詳細がわかってきました。契約金が250万ドル、各年の年俸は、1250万ドル(2019年)、1900万ドル(2020年)、2400万ドル(2021年)、2300万ドル(2022年)、2400万ドル(2023年)、2500万ドル(2024年)、その後、1000万ドルを分割払い。オプトアウト条項やトレード拒否条項といった特則は付いていない模様です。

2018/12/02

ロースター異動まとめ(2018年11月)

11/3 Trevor Rosenthalと契約
11/19 James Bourqueを40人ロースターに追加
11/20 Kurt Suzukiと2年契約
11/26 Henderson Alvalezとマイナー契約
11/30 Yan Gomesをトレード獲得(Jefry Rodriguezを放出)
11/30 Sammy Solisと年俸調停回避の1年契約

●Trevor Rosenthalと契約 
28歳のブルペン右腕、Trevor Rosenthalとメジャー契約を結びました。基本契約は1年700万ドルで、インセンティブを満たすと最高1400万ドルまで上昇。50登板か30試合終了時登板の条件を満たせば2年目(2020年)1年1500万ドルの契約が発動されることになります。

2013年から2017年まで、カージナルスのクローザーとして通算121セーブを記録。2015年にはオールスターにも選出されたトップレベルのリリーバーでしたが、2017年の夏にヒジを故障。同年8月にTJ手術を受け、リハビリを続けてきました(カージナルスからは2017年オフに解雇され、以降はFA)。先日、各球団のスカウトを集めたオーディションを開き90マイル台後半を投げていたとのこと。故障リスクは否定できませんが、セットアッパーとして、あるいはSean Doolittleに何かあったときのクローザーとして期待できる若い投手を、比較的低コストで獲得したいい動きだと思います。

● James Bourqueを40人ロースターに追加 
12月のウィンターミーティングで実施されるルール5ドラフトを前にブルペン右腕のJames Bourqueを40人ロースターに追加しました。2014年ドラフト14順目の25歳。開幕前にはBaseball Americaのプロスペクトハンドブックに名前さえ載らない存在でしたが、ブルペン投手に転向した今季、Potomac(A+)とHarrisburg(AA)で計53イニングを投げて防御率1.70、奪三振率12.91という数字を残して一気に評価を上げました。

● Kurt Suzukiと2年契約 
ブレーブスからFAとなっていた35歳のベテラン捕手、Kurt Suzukiと2年契約を結びました。(詳細は別記事

● Henderson Alvalezとマイナー契約
28歳の先発右腕、Henderson Alvalezとマイナー契約(メジャーのスプリングトレーニングへの参加付き)を結びました。

ベネズエラ出身。2011年にブルージェイズでデビュー。マーリンズにトレードされた後、2013年のシーズン最終戦でタイガース相手にノーヒッターを記録し、2014年にはオールスターにも選出されるなど、将来を属望されていましたが、肩の故障で満足に投げることができなくなりました。今季はメキシコリーグで120回2/3を投げて防御率3.58の成績。ベネズエラ冬季リーグでも投げているようですが、打ち込まれています。上手くいけば儲けものくらいの契約ですね。

● Yan Gomesをトレード獲得(Jefry Rodriguezを放出) 
インディアンズとの間で、Yan Gomes捕手と、Jefry Rodriguez投手、Daniel Johnson外野手、PTBNLとのトレードに合意しました。Gomesは今季、ア・リーグ中地区を制したインディアンズで105試合の先発マスクを被った正捕手。先に獲得したKurt Suzukiとともに来季はベテランの併用で戦うことが決まりました。別記事もご参照ください

● Sammy Solisと年俸調停回避の1年契約(その他、年俸調停対象選手) 
年俸調停対象選手に対する契約提示の期限の日である11月30日に、Sammy Solisと年俸調停回避の1年契約を結びました。契約金額は85万ドル。対象選手のうち、Solisだけは契約提示されずにいわゆるノンテンダーFAとして退団する可能性が高いと報じられていましたが、残留で決着しました。今シーズンは不本意な結果に終わりましたが、その要因の1つは起用法にあったと思われ、Solisはかなりの不信感を持っていたはず。よく残留を決意したなと思います。Solisが苦しんでいたことは伝わってきていましたので、他チームに移ってでも活躍してくれることを願っていましたが、ナショナルズ残留ならなおさら。応援します。

Solis以外の以下の6人の対象選手には契約を提示しました。これから調停回避に向けて交渉が進められることになります。注目は年俸調停最終年(シーズン終了後FA)となるAnthony Rendonと複数年契約を結ぶことができるかどうか。代理人はやはりScott Borasですが、Bryce Harperとは異なり、FA市場に出ることにそこまで強いこだわりはないはず。Harperとの契約の進展にもよるかと思いますが、是非長くチームにいてもらいたい選手です。

Anthony Rendon 
Tanner Roark 
Trea Turner 
Michael Taylor 
Kyle Barraclough 
Joe Ross 

Yan Gomesをトレード獲得(Jefry Rodriguezを放出)

11月30日、インディアンズとの間でトレードがまとまりました。

獲得するのは31歳のYan Gomes捕手。今季、ア・リーグ中地区を制したインディアンズで105試合の先発マスクを被った正捕手です。

ブラジル出身の最初のメジャーリーガーとあり驚きましたが、国籍がブラジルなだけで小学生の時にアメリカに移住して野球を始め、2009年のドラフトでブルージェイズに入団した選手だそうです。2012年オフにトレードでインディアンズに移籍してからメキメキと頭角を現し、中心選手に成長。故障もあり、2015、2016年は打撃成績が低迷しましたが、今季は266/.313/.449と復活。守備の評価も悪くありません。今季は初のオールスターにも選出されていました。なお、ルーキーステータスを卒業した直後、インディアンスでの1年目を終えた直後の2014年の開幕前に6年2300万ドルという長期契約を結んでおり、2019年の年俸は700万ドル、この後、球団側オプションとして、2020年は900万ドル、2021年は1100万ドルで契約することが可能となっています。レギュラーとして活躍してくれるならいずれもお値打ち価格です。

ベテランの右投げ右打ちの捕手ということで先に獲得していたKurt Suzukiと被りますが、捕手というポジションなので相手投手に関係なく完全な併用でいいと思います。オフに入った時点での最大の補強ポイントとされていた捕手については、これでひとまず片が付きました。

一方、ナショナルズが手放すのは、Jefry Rodriguez投手と、Daniel Johnson外野手、それにPTBNLの3人。

Rodriguezについてはつい先日Prospect Profileの記事を更新したばかりで、今後の成長を期待していただけに残念ですし、来季の戦力だけを考えてもAAAで控える先発のデプスとして計算していたRodriguezが抜けることは心配です。ベテランの先発候補をマイナー契約でスプリングトレーニングに招待することはできますが、開幕ロースターに入れなかった時点で退団することが多く、長いシーズンを戦っていくには確実に支配下においておけるオプションを残した若手は貴重なのですが。

もう1人のDaniel Johnsonは2016年ドラフト5順目大卒入団の左投げ左打ちの外野手。フルシーズン1年目となった2017年にAとA+で計549打席に立ち、.298/.356/.505、22本塁打、22盗塁を記録して一躍期待されました(今季開幕前のBA球団内ランキング8位)が、故障もあって今シーズンはAAで打てず(盗塁は21個記録しましたが)、アリゾナ秋季リーグでも力不足を露呈していました。

Rodriguezを含んだことはちょっと不安ですが、Victor Roblesを放出せずに捕手の補強を済ませるにはやむを得なかったということで納得しましょう。