2017/02/03

ナショナルズのクローザーの歴史

2月に突入し、スプリングトレーニングまで約2週間となりました。例年どおり、オフの動きとスプリングトレーニングの見どころを整理した記事を準備中ですが、その作業と並行して開幕前恒例のAll Time Natsシリーズの準備を進めているところで、ふと、この記事を書こうと思いました。

All Time Natsシリーズでは、「Starters」として各ポジションでの先発試合数を集計していますが、2016年シーズン終了時点での各ポジションのトップは以下の通り。

P. Jordan Zimmermann 
CA. Wilson Ramos
1B. Adam LaRoche
2B. Danny Espinosa
3B. Ryan Zimmerman
SS. Ian Desmond
LF. Jayson Werth 
CF. Denard Span 
RF. Jayson Werth

レフトとライトの両方がJayson Werthなことが気にはなりますが、いずれにしても、ナショナルズがポストシーズンに初めて進出した2012年より後に活躍した選手がトップを占めるに至っています。

ところが、「投手編」のSAVESの項目を見ると、球団移転時のクローザーだったChad Corderoが未だにトップのまま。つまり、球団がワシントンに移転してきて以来、どのポジションよりも固定できてきていないポジション、それがクローザーなのです。

(2016年シーズン終了時点)
1. Chad Cordero 113
2. Drew Storen 95
3. Rafael Soriano 75
4. Tyler Clippard 34
5. Matt Capps 26
5. Jonathan Papelbon 26
7. Jon Rauch 23
8. Mike MacDougal 20
9. Mark Melancon 17
10. Joel Hanrahan 14

昨シーズンの後半にクローザーを務めたMark MelanconがFAとしてジャイアンツに入団することとなり、このリストに名前のある投手で現時点でナショナルズに在籍している選手はいません。つまり、今年もまた新しい名前がリストに加わることになりそうな状況です。しかも、それが誰になるかさえ分かりません。

こういう状況を踏まえて、この記事では、ALL Time Natsシリーズがカバーしているとの同じ2005年以降の12年間のナショナルズのクローザーの歴史を振り返ってみることにしました。(2007年以前は当ブログを始める前なので、実感はこもっていません)

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2005年
新生ワシントン・ナショナルズの初代クローザーを務めたのは当時23歳のChad Corderoでした。大学時代からクローザーとして活躍し、2003年ドラフト1順目(全体13位)でナショナルズに指名されると、同年8月には早くもメジャーデビュー。9月には初セーブも記録。翌2004年の開幕をセットアッパーで迎え、6月にはクローザーに昇格。順調すぎるくらいのキャリアで迎えたこの2015年は、74試合に登板してナ・リーグ最多の47セーブを記録。6月には月間15セーブのMLBタイ記録を達成し、オールスターに選出されました。シーズン終了後にはサイ・ヤング賞、リーグMVP投票でも得票。まさに絶対的な守護神だったと言っていいでしょう。


2006年
この年もChad Corderoがシーズンを通じてクローザーを務めました。チームの低迷のためセーブ数こそ29に減りましたが、セーブ成功率はむしろ前年より上昇しています。


2007年
シーズン序盤はセーブ失敗が目立ったChad Corderoでしたが、5月半ば以降は安定し、最終的に37セーブを記録。


2008年
今年も当然クローザーを務めるものと見込まれていたChad Corderoがスプリングトレーニング中に右肩の痛みを発症。4月中に6試合に登板したところでDL入りすると、そのままシーズン終了となりました。【Chad Cordero 在任3年】

これによって突如空いたクローザーの席。まず2008年の前半戦はJon Rauchが引き継いで、17セーブを記録。2006年、2007年のセットアッパーからの自然な昇格でした。よく投げたと思いますが、弱小チームのクローザーらしく、フラッグディールトレードでDバックスに放出されていきました。【Jon Rauch 在任0.5年】

Rauchの放出後は、Joel Hanrahanが9セーブを記録。元々は先発でしたが、2007年終盤に見限られ、この年の春にブルペン転向。開幕当初のモップアップから、結果を残してセットアッパーへ、そして8月以降はクローザーとしてしっかり仕事をしました。制球力は甘いものの、球威で三振が取れるピッチングスタイルはブルペン向きだったのでしょう。

なお、Corderoはオフに入って示されたマイナー契約を拒否してFA退団。この2008年は私がブログを始めた年なのですが、少なくとも数年は、「クローザーChad Cordero」を応援することになると思っていたのに、まさかたった6試合だけとは予想だにしませんでした。Corderoは2017年の今日現在でも実はまだ34歳ですが、ナショナルズを去った後のMLBでのキャリアは2010年にマリナーズで敗戦処理として10試合に投げただけで、クローザーとしての復帰は果たせず。肩の故障とはそれほど恐ろしいものだということを示す例となってしまいました。


2009年
Joel Hanrahanがクローザーとして開幕を迎えたものの、10度のセーブ機会のうち5度で失敗し、防御率も7点台というひどい成績で、追われるようにしてパイレーツへトレードされていきました。【Joel Hanrahan在任1年】

ちなみにHanrahanは、2011年、2012年の2年間で計76セーブを記録するなどクローザーとして花開きました。ナショナルズとしては、惜しいことをしたなという印象も残りますが、トレード相手として獲得したのが2012年の初の地区優勝に大きく貢献したブルペン左腕のSean Burnettですから、このトレードは見事なWin-Winだったと言っていいでしょう。

Hanrahanの後は、開幕後にマイナー契約を結んでいた当時32歳のベテランMike McDougalが昇格し、安定感があるとは言えない内容ながら20セーブを記録。しかし、オフに入ると球団は年俸調停対象だったMcDougalに契約を提示せず、いわゆるノンテンダーFAとして退団。(翌年のスプリングトレーニング中に再度マイナー契約を結びましたが、昇格することはありませんでした。)【Mike McDougal 在任0.5年】


2010年
前年はパイレーツでクローザーを務めながらノンテンダーFAとして市場に出ていたMatt Cappsと1年350万ドルで契約。開幕から7月末までの47試合に登板して26セーブ、防御率2.74の好成績でオールスターにも選出される活躍でしたが、あっさりとツインズにトレードされていきました。3年連続でのフラッグディールトレードでのその時点でのクローザーの放出。当時のチーム状態をよく表していると思います。なお、このトレードでナショナルズに来たのがWilson Ramosですから、そういう意味でもCappsの貢献には感謝しています。【Matt Capps在任 0.5年】

8月以降の2か月間で最も多いセーブを記録したのがこの年の5月にメジャーデビューしたDrew Storenでした。ただし、低迷するチームの中でそもそもセーブ機会が少なく、わずかに5セーブ。Storen自身の投球内容も、デビューした5月から7月までは2.61だった防御率が、8月以降の2か月間は4点台後半と低迷するなど不安定なものでした。


2011年
Drew Storenのスプリングトレーニングでの大不振により開幕から10試合ほどはSean Burnettがクローザーを務めましたが、4月半ばには早くもStorenが立場を取り戻しました。以降、シーズンを通じて安定した内容でクローザーとして投げ続け、終わってみれば73試合で防御率2.75の43セーブ(リーグ4位)。この時点でメジャー2年目の23歳。クローザーとしての地位を完全に確立し、今後数年間のクローザーを心配する必要はないかと思わせました。


2012年
当然クローザーと期待されたDrew Storenでしたが、スプリングトレーニング中に右ひじの痛みを発症して骨片除去手術を受けることになってしまい離脱。【第一次 Drew Storen 在任1.5年】

開幕当初は100マイル投手のHenry Rodriguezがクローザーを務めましたが、5月になると大乱調で早々に失格。あのノーコンっぷりはジョークかと思うほどでした。【Henry Rodriguez 在任0.25年】
 
以降は、9月に入るまでTyler Clippardがしっかりと役目を果たして32セーブを記録しました。この年の前後6年間にわたってナショナルズ・ブルペンの中心にあり、通算ホールド数でトップに立つClippardですが、この年は緊急事態の中クローザーとして貢献してくれました。が、9月になるとClippardが調子を落とし、リハビリを経て7月に復帰していたStorenにスイッチ。【Tyler Clippard 在任0.5年】

このStorenがレギュラーシーズン終盤で安定感のある投球を見せ、再びクローザーの地位を取り戻し、ポストシーズンに突入しました。

ナショナルズにとって初のポストシーズンとなった、カージナルスとのNLDS。Storenは第1戦でセーブを記録すると、4戦では同点の9回表を気魄のこもったピッチングで無失点に抑え、その裏のJayson Werthの逆転2ランで勝利投手となりました。が、、、第5戦、2点リードの9回表、あと1死、あと1ストライクまで行きながら、いまだ語り継がれる逆転負けの主役となってしまいました。【第二次 Drew Storen 在任 0.25年】


2013年
NLDSの逆転負けがあったとはいえ、9月の活躍からすればDrew Storenにクローザーを任せてもよかったはずですが、フロントの判断はRafael Sorianoの補強でした。前年までヤンキースでクローザーを務め、FAとなっていたSorianoと1月に2年2800万ドルで契約。68試合で43セーブ、防御率3.11は見た目は立派な数字ですが、内容は良くなかったというのが率直な感想でした。

この間、Storenが不振のためオールスター明けにAAAに降格させられ、この措置についてTyler Clippardが公然と球団批判を展開するという騒動がありました。その後、8月に再昇格したStorenは好投したものの、この頃からClippardとともにトレード放出の噂が飛び交うようになりました。


2014年
この年もRafael Sorianoがクローザーを務め、防御率3.19、32セーブというそれなりの数字を残しましたが、内容は散々で、地区優勝を争っていた9月上旬の試合で3点のリードを守りきれなかったことで遂に失格となりました。オフにはFA退団。【Rafael Soriano 在任1.75年】

Sorianoを降格させた後は、Drew Storenが三度目のクローザー就任。開幕から8月までセットアッパーとして防御率1点台の圧倒的な安定感を示していたこの年のStoren。クローザーを務めた9月も、14試合で10セーブ、自責点0という完ぺきな仕事をしました。

しかし、ジャイアンツとのNLDS第2戦にまたも悪夢が待っていました。1点リードの9回表2死1塁でマウンドに送られ、連打であっという間に同点にされてしまいました。延長18回の末にこの試合を落とし、当然シリーズを落とすことになりました。2012年に続く大事な試合でのセーブ失敗。これにより、Storenではポストシーズンは戦えない、という論調が生まれたのも確かでした。


2015年
NLDSでのセーブ失敗についてはMatt Williams監督の采配ミスとする声が多数であり(私もこれに与します)、Mike Rizzo GMもDrew Storenへの信頼を明言し、特にブルペンを補強することもなく、開幕を迎えました。Storenも期待に応え、7月下旬まで31回のセーブ機会のうち29回で成功。防御率1.73、相手打者を.212/.271/.250に抑え込む素晴らしいピッチングを続けました。チームは地区首位を争っており、Storenがクローザーとして三度NLDSのマウンドに立つことが期待されていました。

ところが、7月28日、この年のチームの運命を変えたJonathan Papelbonのトレード獲得が発表されました。以降、中継ぎに降格したStorenは20試合に登板して防御率6.75。翌年1月にブルージェイズにトレードされ、5シーズンに渡ったStorenのナショナルズでのキャリアは終わりました。いい時期もあれば悪い時期もありましたが、とにかく記憶に残る投手でした。【第三次 Drew Storen 在任0.75年】

Papelbon?8-9月に7セーブを記録しましたが、いろんな意味でチームをぶち壊してくれました。笑


2016年
放出待望論がありながら、(当然ですが)引き取るチームも現れず、Jonathan Papelbonがクローザーのまま開幕。序盤は曲がりなりにも仕事をしていましたが、次第に打たれる試合が多くなり、7月末にMark Melanconをトレードで獲得したことでようやく解雇することができました。37試合で19セーブ、防御率4.39。優勝争いするチームのクローザーの成績ではないですね。【Jonathan Papelbon 在任1年】

フラッグディールトレードで来たMelanconが、30試合で17セーブ、防御率1.82というびしっとした結果でレギュラーシーズンを締めくくると、ドジャーズとのNLDSでも1,2,3,5戦で登板し、計4回1/3を無失点と好投しました。惜しむらくは、Melanconをセーブシチュエーションで送り出せたのが1試合だけだったことでした。【Mark Melancon 在任0.5年】


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以上見てきた通り、2008年以降の9年間にクローザーの地位に就いたと言っていい投手が10人。2年以上クローザーの地位にとどまった投手はいません。Drew Storenが3度務めていますので、「クローザー交代」の回数で言えば実に12回にも及んでいました。強いチームでこれだけくるくるとクローザーが変わるチームはなかなかないでしょう(他球団のことは詳細には調べていませんので当てずっぽうですが)。

ナショナルズが、常勝軍団としてあり続けるために、そしてポストシーズンで勝ち進んでいくためには、やはりクローザーの安定は必要です。

そして、いつの日か、Chad Coderoの記録を破るような大クローザーが生まれてくることを期待して、それが誰になるのか、見守っていきたいと思います。

1 件のコメント:

しゅん さんのコメント...

今年は誰がやることになりますかね。