サンクスギビング休暇で静かだった週末が空けた直後の12月2日月曜日の夜(現地時間)。ナショナルズとタイガースとの間でのトレードが発表されました。ナショナルズはDoug Fister投手を獲得し、Steve Lombardozzi内野手、Ian Krol投手、Robbie Ray投手の3選手を放出。
Doug Fister
33G (32GS) 208.2IP 44BB 159K 3.67/1.31 (2013 season for DET)
29歳(年明け2月に30歳)の先発右腕。マリナーズに入団し、25歳の2009年にメジャーデビュー。マリナーズではパッとした成績は残していませんでしたが、2011年のフラッグディールトレードでタイガースに移ると8,9月の2か月で10試合に先発して8勝。昨季は少し故障離脱しましたがそれでも10勝し、今季もローテーション投手として14勝。ポストシーズンでも通算8試合に登板(7先発)して、3勝2敗、防御率2.98という成績を残しています。タイガースではJustin Verlander、Max Scherzer、Anibal Sanchezに次ぐ4番手を務め、ナショナルズでもやはり4番手と見られていますが、2013年のFangraphsのWAR(Wins Above Replacement)も数字(4.6)はナショナルズの3人を上回り、MLB全体でも12位。さらに過去3年間に対象を広げるとMLB全体で9位のWARを記録。つまり、ほとんどのチームならエースとして迎えられるであろう投手ということです。力で三振の山を築くのではなく、ゴロを打たせるタイプ。被本塁打が極めて少ないのも好印象。タイガースのひどい内野守備に足を引っ張られてのこの成績であり、ナショナルズの平均より上であろう内野守備をバックにすれば、そしてDHがないことから与しやすいと思われるナ・リーグの打線相手なら、引き続きかなりの好成績を残すものと期待されます。FA前の保有期間はあと2年。年俸調停2年目となる来季年俸は700万ドル前後と見込まれています。
Steve Lombardozzi
118G 307PA 2HR 8BB 34K .259/.278/.338 4SB (2013 season for Nationals)
父親も同名(Sr.)の元メジャーリーガー。地元メリーランド州出身。2008年19順目とドラフト時の評価は決して高くありませんでしたが、マイナーで高打率を続けて評価を上げ、2011年のセプテンバーコールアップでメジャーデビュー。翌2012年、決して下馬評は高くありませんでしたがスプリングトレーニングを生き残って開幕ロースターに入ると、本職のセカンドだけでなく、サード、さらにはレフトも守れる器用さを見せ、結局2シーズンにわたってメジャーのベンチから外れることはありませんでした。ただ、打撃、守備、走塁とも特筆するところがなくレギュラーとして使うには役不足。はっきり言えば、代わりはいくらでもいるタイプの選手。背番号1の上に「LOMBARDOZZI」という長い名前のユニフォームの後姿は印象的でしたが。
Ian Krol
32G 27.1IP 8BB 22K 3.95/1.32 (2013 season for Nationals)
昨オフのMichael Morseのトレードでアスレティックスからきたブルペン左腕。まだ22歳。2012年シーズンにA+とAAで防御率5点台に終わっていたこともあり、トレード時の決して評価は高くありませんでした(そもそもPTBNLでした)が、良い方向に期待を裏切ってくれました(余談ですが、A.J. Coleが順調に成長し、Blake Treinenも先発投手としてAAで防御率3.64、Morseが散々な成績だったことを思うと、このトレードはRizzo GMの見事な判断でした)。今季はHarrisburg (AA)で21試合に投げて防御率0.69と快投し、ブルペン左腕が不足したチーム事情もあって、6月5日にまさかのメジャーデビューを実現。しかも9試合連続無失点と旋風を巻き起こしました。ただし、研究されたのでしょう、その後は結構打たれていました。
Robbie Ray
27G (27GS) 142.0IP 62BB 160K 3.36/1.25 (2013 season for A+ and AA)
22歳の左腕投手。2013年春に書いた記事はこちら。今季は、昨年苦戦し再挑戦となったA+で安定したピッチングを展開し、夏にAAに昇格した後もまずまずの投球を続けました。制球難は相変わらずで9イニングあたりの四球数はほとんど改善していませんが、球威が上がったことでイニング数を上回る三振を奪い、プロスペクトとしての評価は急上昇。11月6日に発表されたBAのプロスペクトランキング(後日記事にする予定)では、球団内で5位にランクされていました。上限は先発3番手あたりという評が大勢ですが、左腕ということもあり、少なくともブルペン投手としてメジャーリーガーにはなるだろうと見られます。とにかく課題は制球難。
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Dan HarenがFA退団となり、先発投手を1人補強することは規定路線。FA投手に接触しているとの情報はほとんどなかった一方で、カブスのJeff SamardzijaやFisterの同僚のScherzerのトレード獲得を模索しているという噂が流れていました。また、タイガースがScherzer、Rick Porcello、Fisterのうちの1人をトレードに出したがっているという情報も流れていましたので、「ナショナルズがFisterをトレード獲得」というニュース自体に驚きはありませんでした。
驚いたのは、その対価が思ったより軽く済んだことでした。当初ツイッターで発信された情報にはナショナルズが放出する選手の名が書かれていなかったのですが、Anthony Rendonは確実で(Prince Fielderを放出して空いたファーストにMiguel Cabreraを戻し、空いたサードにRendonを使う)、加えて、Taylor Jordan, Tanner Roark、Nate Karnsのうちから1人は間違いないだろうと覚悟していました。ところが、しばらくして明らかになったのは上記の3人。「可もなく不可もなしのユーティリティ」、「ビギナーズラック感のあるブルペン左腕」、「先発としてメジャーに到達するかどうか分からないAAのプロスペクト」の3人で、Fisterほどの投手の2年とトレードしてくれるなんて意外としか言いようがありませんでした。タイガースのDave Dombrowski GMはトレード巧者として知られており(上記のマリナーズからFisterを獲得したトレード然り)、何かの罠か?という疑念を持ってしまうほどの一方的な印象。多くの記者の論調もそんな感じ。タイガースファンは怒り心頭な様子でした。
ナショナルズファンとしては思わず顔が緩んでしまうのは確かですが、Fisterが1球もマウンドから投げていない現状で喜ぶのは早過ぎるでしょう。KrolとRayはともに22歳と若いこともあり、トレードの価値はそんなすぐに判断されるものではないでしょう。とはいえ、これだけの損失で先発ローテーションの穴をすっきり埋めたRizzo GMの手腕には改めて恐れ入りました。
これで来季の先発ローテーションはStrasburg, Gio, Zimmermann, Fisterまでの4枠が確定。残り1枠の現時点での本命はRoss Detwilerですが、Jordan、Roark、Karnsの3人にも機会は与えられそうです。3人とも既にメジャーを経験し、JordanとRoarkは結果も残しています。かつ、オプションが残っているのでAAAで開幕させることも可能。質・量ともに最高の状況といえます。改めて、若手の先発投手を誰1人放出せずによくFisterを獲得できたものだと、感心します。
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