2014/12/15

Harper と2年契約に合意

Bryce Harperがナショナルズと2年750万ドルの契約に合意したことが発表されました。内訳は、2015年が250万ドル、2016年が500万ドル。まずは、ホッと胸をなでおろしました。

いきなりそんなこと言われても、相当深くフォローしている人でないと何のことか分かりませんよね。日本語のニュース記事はなさそうですし。

経緯を説明しておきましょう。

話は2010年8月にさかのぼります。その年の6月のドラフト全体1位で指名されたHarperとナショナルズの交渉は期限直前までもつれこみ、最終的に合意したのは期限の26秒前のことでした。当時、5年総額990万ドルと公表されたこの契約。2015年シーズンがその5年目に当たるのですが、契約に規定された2015年の年俸は、基本給100万ドル+メジャー昇格していれば支払われるボーナス50万ドルの計150万ドルでした。

ところが、例によって話をややこしくしてくれるのが年俸調停制度です。同制度の基本的なルールは次の通り。
・メジャーリーガーの年俸はメジャー登録3年を経過するまでは約50万ドルの最低保証額。
・3年を経過した選手は年俸調停の対象となり働きに応じて(=類似の成績を残した過去の選手並に)年俸が上昇。合意できなければ年俸調停で第三者に決定してもらうことも可能。
・上記の3年経過の選手に加え、2年以上3年未満経過の選手のうちで登録日数が上位の22%の選手は年俸調停となる。(いわゆるスーパー2)
・6年を経過した選手はFAとなる。

ただし、このルールには例外があります。それは、「別途契約が結ばれてない限りは」というもの。

ここで今回のケースに戻ると、2014年シーズン終了時点でのHarperのメジャー登録日数は2年と159日であり、スーパー2に該当し、仮に年俸調停プロセスに乗ったとすれば、年俸は250万ドル程度となるだろうという試算をいろいろな専門家が示しています。しかし、2010年8月に結ばれた契約が存在し、2015年の年俸は150万ドルと定められていますので、こちらが優先するようにも思われます。

これに対し、Harperの代理人であるScott Borasが主張したのは、「年俸調停の権利を得ることができる場合は元の契約を解除することができる(いわゆるオプトアウト)」はずで、Harperはこのオプトアウトを行使し、スーパー2として年俸調停の対象となるべきだというものでした。契約合意が期限ギリギリだったため文字にすることはできなかったが、2010年8月の時点で口頭での合意が存在していたと主張するBorasと、そんな合意はなかったという球団側との、文字通り「言った言わない」の争いとなっていました。

この争いの存在が最初に明らかになったのは昨年11月のワシントン・ポストの記事でした。それから1年間、水面下での交渉が続けられてきましたがこれまでには合意できず、12月16日(火)に異議申立てのヒアリングがセットされるまでに至っていました。異議申立てプロセスは、(いつも年俸調停プロセスで書いているように)選手と球団との間に大きな溝を生じさせる全く不愉快なプロセスとなるものであり、(可能性は極めて低いと思われますが)長期契約の芽を消さないためにも回避することが期待されていました。

今回、そのヒアリングの前に(とはいえまだ1日以上あったわけですが)、合意できたことは、まずは何よりの朗報でした。

2015年の250万ドルというのは、完全にHarper側の主張に沿った(つまり年俸調停対象として得られたであろう)金額ですが、一方、2016年の500万ドルについては、仮に2015年の年俸が250万ドルで2015年にHarperがスーパースター級の活躍をした場合には割安になると言えるもの。また、2017年の年俸調停のベースになるのもこの500万ドルとなるため、それ以降の年俸もある程度コントロールできるようになりました。変な言い方ですが、Harperがスーパースター級の活躍をしてくれることを、年俸高騰の心配をしないで期待できるようになったとも言えます。

なお、この2年契約の後、あと2年、年俸調停対象として球団に保有権があり、2018年シーズン終了後にFAとなるというスケジュールには変更はありません。

以上、総評すると、今回の2年契約は、両者にとってメンツが立って実利も伴うウィンウィンのものと言えるでしょう。Rizzo GMとBoras。さすがです。

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